過酷な練習を耐え抜いた150人のかき夫たちは時には勇ましく時には顔を歪めながら、総重量4トンにもおよぶ太鼓台に挑む。
その場でしか味わえない危うさ、重厚感、スピード感、男くささ、儚さはまぎれもなくロック。
10月17日、20台の太鼓台が一堂に集結した『上部地区山根グラウンド統一寄せ』の模様をロック目線でレポート。
住宅街を練り歩く太鼓台~非日常的な光景~
上部地区に属する太鼓台は普段は閑静な住宅街を練り歩きながら、会場である『山根グラウンド』を目指す。
それを間近で見守る見物客。非日常的な光景はまさにロック。
太鼓台が続々と入場~誰よりも長く、誰よりも高く~
会場に入場する際も見どころのひとつ。指揮者の合図のもと、男たちは太鼓台を天高く差し上げる。
高く、長く、差し上げられるほどいいとされており、ロックンローラーがよく口にする「誰よりも高く飛べ」に通じるものがある。
四隅にぶら下がっている房の揺れ具合も評価基準のひとつで、ある種の様式美を貫き通しているところもロック。
そして、太鼓祭りでは腹に響く太鼓の音、「ソーリャ、ソーリャ」の掛け声、かき夫たちの熱量をライヴハウスさながらの至近距離で感じることができる。
戦士の休息
戦艦や戦車の大砲を彷彿させる太鼓台のかき棒。
金糸を惜しみなく使用した垂れ幕は数千万とも数億円とも言われている。
迫力満点の一斉差し上げ~男たちの意地と粋~
今回の統一寄せのハイライトと言えるのが、20台の太鼓台による一斉差し上げ。
車輪を外し、前へ前へとせり出てきた太鼓台が約3千人のかき夫たちによって差し上げられる様は圧巻としか言いようがない。
混とんとしているようで実は秩序が保たれており、ハイスタンダード主催の『AIR JAM'98』で巻き起こった巨大モッシュピットもこんな感じだったと回想。
太鼓祭りは今もなお求められている
写真は中萩地区による演技が始まる直前の模様。
MCが「どんな演技を見せてくれるのでしょうか」とさかんに煽るなか、スマホを構え今か今かと心待ちにしているオーディエンス。
その期待感たるや半端なく、2002年のサマーソニックでのガンズ&ローゼズを待ちわびる千葉マリンスタジアムの空気とまったく同じ。
やがて太鼓台を寄せたまま回転する難易度の高い大技が始まると場内は歓声とどよめきに包まれ、近くにいた若い女性も「スゴい。カッコいい!」とハイテンション。
まさに心技一体。想像を絶するパフォーマンスに鳥肌が立った。
最後に
今回の取材に同行したスタッフHに初めての新居浜太鼓祭りについて感想を訊いた。
「最初は怖いイメージがあったんですけど、全然そんなことはなくてむしろ和気あいあいというか、人手が足りない太鼓台をサポートしている人もたくさん見かけたし。なによりも、地元の老若男女みんながお祭りを愛してる。お祭りを大事にしている印象を受けました」
たしかに山根グラウンドで繰り広げられている太鼓祭りに殺伐とした雰囲気はない。けれども、太鼓台に関わる人たちすべてに「自分たちが最高の演技をやってやる」という、使命感にも似た緊張感がみなぎっていた。
そう、とことんロックしてやるよとでも言いたげな。(撮影/文:おかべぇ)